
麦島善光さんは、名古屋で建設会社を立ち上げた経歴を持ち、その会社をベースに巨大な建設会社ホールディングスを設立するという実績を誇る実業家です。
麦島善光さんは元々、建設業界ではその実績が知られていたのですが、熱海市土石流が発生後はその関係性がクローズアップされることになってしまいました。
熱海市土石流の原因は、麦島善光さんが土地を所有する前の盛り土にあるという見方が強いのですが、盛り土があった場所の現在の所有者が麦島善光さんであったためにまるで犯人のように仕立てられてしまいました。
本稿では、麦島善光さんの実業家としての輝かしい経歴や実績を紹介し、また、熱海市土石流の原因や現在の復興状況も調査していきたいと思います。
- 実業家である麦島善光のプロフィールや人物像
- 一大建設グループを築いた麦島善光の経歴と実績
- 熱海土石流の人的被害や建物被害について
- 熱海土石流の原因はメガソーラー?盛り土?
- 熱海土石流の復興、復旧状況について
- 盛り土の土地の現在の所有者は麦島善光
- 違法な盛り土を行ったのは小田原の業者
- 責任の所在をめぐって巨額の裁判が起こされた
麦島善光とは?
麦島善光さんとは、売上が700億円以上の建設会社グループの社長や会長を歴任し、実業家としての手腕が評価されている人物です。
グループは10社近くの建設関連会社からなり、麦島善光さんは経営の方向性の舵取りを一手に担い、グループは15年ほどで売上を200億円近く伸ばしています。
若くして会社を立ち上げ、現在は建設会社の会長職は退いているものの、新たに教育分野にやりがいを求め、複数の学校法人で理事長を務めています。
プロフィール
生まれは長野県西部の山間部にあたる西筑摩郡(現・木曽郡南木曽町)で、生年月日は1936年(昭和11年)7月14日です。身長や血液型、趣味といった情報はインターネット上では見つけることができませんでした。
また、2022年3月現在で85歳と高齢であり、TwitterやInstagramでは実名で本人だとわかるようなアカウントも発見できていません。
親類家族については、実弟の麦島善太郎さんと一緒に建設会社を経営していたようです。
なお、それ以外の親兄弟や麦島善光さんの妻や子供などの詳細情報はないのですが、最初に立ち上げた会社の社長が麦島姓の方なので、おそらく息子さんでしょうか。
ただ、血縁関係は推測でしかないので、今後も調査を続け、何か分かりましたら情報を追加したいと思います。
人物像
若くして起業したことから、チャレンジ精神が旺盛な人物であることは想像に難くありません。また、建設会社だけではなく、別会社として不動産部門の会社を設立するなど、経営の先を見通す力もあるようです。
そして現在は教育分野に力を入れていて、その理由としてコロナ後の世界で経済を立て直すのは、経済・経営に関する基礎知識と実務能力の両方が必要だという考えからです。
資本主義の実業家としてはお金を稼ぐことは大事ですが、今後の世界で教育のことまで考えている、視野の広い人物であると言えます。
麦島善光の経歴・実績
麦島善光さんの経歴と実績はどうなっているのでしょうか。
若くして会社を設立したことはすでに触れましたが、ここでは、経歴と実績を時代ごとに区切って紹介していきたいと思います。
建設会社の設立と不動産部門会社の設立
最初の建設会社を創業したのは麦島善光さんが22歳のときの1958年です。
その後、1972年には管理業務と分譲業務を主体とする会社を立ち上げ、不動産部門をこの会社が担うことになります。
ベースとなる建設会社を肥大化させるのではなく、別会社を立ち上げるという非凡な経営センスを見せています。
傘下会社を増やしM&Aグループ化を推進
1984年にはマンション管理を行う会社を設立、1999年にはデザインに特化した設計・建築会社も設立します。
この時点でグループ化の構想は進んでいて、M&Aにより効率的に経営できるグループの形が徐々にできあがっていきます。
ホールディングス化し売上は700億円を突破
さらに2000年、2001年にもグループ会社を増やし、そして満を持して2004年にはホールディングス(持株会社)が設立されます。
これにより、グループ会社の経営をホールディングスが担当することで、経営はホールディングス、事業は各グループ会社という役割分担が明確になり、建設会社グループとして効率的な営業が可能になっています。
教育分野への進出
会社を巨大な建築会社グループへと成長させた麦島善光さんですが、2015年3月には、ホールディングスや建設会社の会長兼社長の座から退任しています。そして、建設会社を後任に任せた後は、教育分野へと進出します。
日本人を対象にした学校では、経済・経営に関する基礎知識と実務能力、IT技能、質の高い語学力など、国際的に世界で通用する人材育成を目指しています。
また、外国人留学生を対象にした学校では、グローバル化が進む世界に対応できる教育カリキュラムを組み、留学生の母国の発展や日本社会の発展に寄与できる人材を育てるとしています。
熱海市で発生した土石流について
2021年(令和3年)7月3日午前10時半(JST)ごろ、大規模な災害が発生しました。場所は熱海市の伊豆山地区で、土石流が発生して大量の土砂が街へと流れ込み、建物施設や民家をなぎ倒し、多くの犠牲者が出る事態になりました。
この災害は、完全な自然災害とは言い難い複数の人為的な要因が確認され、被害が拡大したと見られています。
ここでは、熱海土石流災害についての詳細と、現在の復旧・復興状況までを詳しく紹介していきます。
被害状況と近隣施設等への影響
災害が発生した場所は伊豆山の逢初川の源流域になります。場所は標高が約390mの地点で、土砂は逢初川の谷を一気に落ちて街の一部を飲み込み、海にまで到達しています。
被害範囲は延長約1km、最大幅約120mと広範囲に及び、人的な被害は死者27名、行方不明者1名、重傷者1名、軽傷者1名の計31名となりました。また、住宅被害は全壊53棟、半壊11棟、一部破損34棟の計98棟でした。
さらに、被害は建物だけではなく漁業にも及んでいます。伊豆山の港付近の海底には大量の土砂が堆積し、アワビやサザエ、伊勢海老漁に大きな影響を及ぼしています。
特に、伊勢エビの漁場では生息場所となっている大型の海藻が完全に消失してしまい、漁獲量は20%余り減少していることが確認されています。
これは、災害当日の影響に加え、川の上流で行われている復旧工事で出た土砂が海に流れ込んでいるためで、影響は長期化が懸念されています。
メガソーラーと土砂災害の関係
災害が発生した当初は、土砂が崩落した場所のすぐそばに大規模なメガソーラー施設(太陽光発電施設)があったため、メガソーラーが原因だとする憶測がなされました。
場所は土砂が崩落した地点から南西に約25メートル地点で、メガソーラーを作るために木を伐採し、結果として山が保水力を失い、土中で流れ出た水が崩落地点で飽和状態になり、土石流が発生したという推論がまるで結論のように発表され、完全にメガソーラーが犯人のような論調になりました。
しかし、静岡県の難波副知事は「我々現地に入って確認しましたが、メガソーラーはこの崩壊には殆ど関係していないと思われます」と発言しています。
そしてその後の調査により、土石流の原因は盛り土であることが確実視され、メガソーラー犯人説はあっという間に終息することになりました。
人為的に作られた盛り土が土石流の大半を占める
山の谷を滑り落ちた土砂の容積は5万5,500立方メートルと推定され、その97%にあたる5万4,000立方メートルが人為的に他所から持ち込まれた盛り土でした。
山の斜面に沿って設置された盛り土は、記録的な雨によって支持を失い、連鎖して崩落した勢いで下部が大崩落し、大量の水を含んだ濁流が熱海の街を襲ったのです。
復旧・復興状況
熱海市での土石流災害が発生してから、2022年3月時点で8ヶ月以上が経ちました。
これは日本だけではなく世界の常ですが、大災害が発生してからしばらくは注目されますが、その後の現地の復旧・復興状況は見過ごされがちになってしまいます。
実は、現地での復旧・復興はまだまだ道半ばで、2022年2月発表の熱海市の予算では、土石流災害の復興・復旧費用として10億円が計上されています。
また、熱海市長の斉藤栄市長は3月の熱海市議会において、道路などインフラの復旧には「2年以上かかる」との見通しを明らかにしています。
ほかにも、土石流が流れ込んだ伊豆山港は、破壊されたトイレとシャワー室の再建の予算が足らず、漁師がクラウドファンディングで伊豆山港復旧と復興事業資金を募っています。
麦島善光は熱海市土石流起点の土地を所有
麦島善光さんは熱海市土石流起点の土地を所有していたことから、盛り土の犯人ではないかと風説を流布されてしまいました。しかし、麦島善光さんが盛り土を行ったのではなく、以前の所有者に多くの責任があるという事実が浮上しています。その中で、遺族など70名が土地の以前の所有者と麦島善光さんなどを相手取り集団提訴を起こしました。
ここでは、盛り土問題の大元である業者や多くの問題について説明します。
土地の盛り土を行ったのは以前の所有者
麦島善光さんが伊豆山の土地を所有する前には、小田原の不動産管理会社が所有していました。
不動産管理会社は伊豆山を別荘などの宅地にしようと考えていたようですが、許認可がおりず、結果としてその土地に残土などを持ち込み、盛り土を造成することになったのです。
不適切な盛り土と警察の捜査
盛り土という行為自体は、法律や規定にのっとって行われれば大きな問題にならなかったはずです。
しかし、小田原の不動産管理会社は、県条例で必要とされる届け出の工期が切れている、申請と異なる工法で工事を施工する、産業廃棄物(木くず)を残土に混ぜる、などといった不適切行為を繰り返し、何度も行政指導を受けていました。
また、山の保水力という点で決定的になっているかもしれないという事柄として、堰堤や排水溝といった盛り土に対する排水設備が不十分だったという点も指摘されています。
問われる行政の責任
行政は、不適切行為が明るみに出るたびに行政指導は行っていましたが、より強い指導である措置命令までは出しませんでした。そのために、小田原の不動産管理会社の不法行為は増長し、盛り土の高さは申請の15メートルを上回り、条例違反となる高さ50メートルまでに達しました。
行政が指導力を発揮して業者に強く指導できていたら、もしかしたら被害は軽減できていたかもしれません。
一連の対応を第三者委員会が調査していましたが、5月13日に最終的な報告が公表されました。記録が残っておらず十分に検証ができないところはあるものの、行政の対応としては「失敗だった」という指摘がなされています。
行政側の公文書の管理の仕方等にも踏み込んで指摘をしています。熱海市長はまだ納得ができないところがあるようで一部反論はしているものの、静岡県は非を認めて謝罪しています。謝罪内容について記載しておきます。
難波副知事「報告書の内容を真摯(しんし)に受け止め、今回のような災害を二度と起こさぬよう、行政対応の改善を図る」
※引用:https://www.asahi.com/articles/ASQ5K76G7Q5KUTPB007.html熱海市 斉藤栄市長「反省すべき点は真摯に受け止めるが、納得しかねる内容だ。検証のバランスが欠けている」
※引用:https://news.yahoo.co.jp/articles/166751af70096aa8da02598f905101a52b1262b2
集団提訴による裁判中
土石流災害の被害に対しては、遺族ら70名が盛り土の土地の現在の所有者と旧所有者らを相手取って約32億6,800万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁沼津支部に起こしています。また、2022年2月には、原告に遺族14名が新たに加わり、原告の数は合計84名になり、請求額は増えて約57億8,600万円になっています。
そして最新の情報では、静岡地裁沼津支部において、2022年5月18日に第1回口頭弁論が開かれる見通しとなっています。
まとめ
以上が実業家の麦島善光さんの経歴や実績、そして熱海市土石流の原因や現状の復興状況について調査した結果です。
麦島善光さんの実業家としての経歴と実績は文句のつけようがなく、売上高数百億のホールディングスを設立していまなお成長の途上にあることは称賛されることです。
一方、熱海市土石流が発生した場所の所有者として、違法な盛り土を行ったのは前所有者であるものの、裁判では現所有者としての責任を問われています。
今後、裁判が始まってその責任の所在などが公判で明らかになっていくことになり、誰の言い分が正しいと認められるのか、今後も注目し続けたいと思います。