いなば食品株式会社は、缶詰やレトルト食品、ペットフードなどを製造・販売している食品メーカーです。
いなばペットフード株式会社など多数のグループ企業を展開し、日本国内のみならず、アジアや欧州、中南米、中東・アフリカにも多くの製造・販売拠点を構えています。
2025年度通期のグループ連結売上高は2,000億円に迫る勢いで、営業利益とともに過去最高を更新する見込みです。
いなば食品は破竹の勢いでグローバル戦略を加速させていますが、経営上の課題や死角は存在しないのでしょうか?
本稿では、いなば食品の事業の内容や会社を取り巻く環境などを深掘りし、経営の実態や見通しに迫ります。
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いなば食品とは?

いなば食品のルーツは、江戸時代の1805年(文化2年)に初代・稲葉与吉が駿河湾を望む静岡・由比の地で海産物商として創業した「いなば商店」にさかのぼります。
1971年に国内ブランドとして発売した「いなばライトツナ」は、冷凍輸出や生食が主流だったキハダマグロを缶詰にした画期的な製品で、その後のツナ缶業界のあり方に大変革をもたらすこととなりました。


また、いなばペットフード株式会社が2012年に発売した猫のおやつ「CIAO ちゅ~る」は、まぐろやかつお、鶏ささみなどをペースト状にした国内初の液状タイプで、世界中で大ヒットしています。
「CIAO ちゅ~る」が登場するまでの猫のおやつは単に食べることに主眼が置かれ、ドライタイプや缶詰が主流でした。
ところが、いなば食品は「飼い主とペットのコミュニケーションを楽しむ」という斬新な価値観を提示し、そのようなライフスタイルは世界中のペットオーナーに浸透しています。
海外部門については、2004年に中国現地生産を開始し、2009年にタイにペットフード現地法人を設立、2016年以降は海外法人いなばアメリカ、いなばヨーロッパ、いなばイギリス、いなばマレーシアなどの営業拠点を設け、グローバル展開を加速させています。

いなば食品グループは、日本発の高度な品質基準はもとより、ペットを「家族の一員」と考える現代の価値観においても世界をリードする存在です。
いなば食品の企業DNA

ではなぜ、いなば食品は静岡・由比のローカル企業からグローバル企業へと飛躍し、業績を伸ばすことができたのでしょうか?
その秘密は、創業から受け継がれている企業DNAにあります。
グローバル戦略
いなば食品は海産物商として始まりましたが、現代のように輸送技術やルートが発達していない明治初期に、静岡特産の「生蜜柑(みかん)」の北米輸出に挑戦しました。
しかし、冷凍庫など存在しなかった時代、太平洋の果てまで生鮮品を届けるという海外輸出事業がどんなに大胆なものだった かは容易に推察できます。
創業期からグローバル市場に向けたビジネスに乗り出していたスピリットは終戦後も消えることはなく、1958年に開始したペットフード事業は主に北米、イタリア向けの輸出が中心でした。
いなば食品グループのグローバル戦略は、先人たちが築いた勇敢な偉業の上に成り立っているのです。
独創と挑戦
いなば食品の企業理念は「独創と挑戦」です。
「真似しない、真似されない」という製品開発のコンセプトを掲げて新たな市場を開拓し、シェアを拡大してきました。
すべてのフードでの化学物質の無添加、無着色、保存料・殺菌剤を一切使用しない「天然・自然・本物」にこだわる開発姿勢も浸透している中、社員一人ひとりが独創性を追求しているからこそ、他社の追随を許さない製品が次々と生まれています。
また、いなば食品の220年に及ぶ歴史は、挑戦の繰り返しでもあります。
1936年には、当時の主力事業として安定していたかつお節製造のため、冷凍庫を建設する計画を立てていましたが、時代のニーズが変化していると考えた当時の経営者が決断したのは缶詰工場建設への計画変更でした。
缶詰製造の経験はなかったものの、失敗を恐れることなく挑戦したことが、のちの「いなばライトツナ」につながりました。
さらに、まぐろやかつおを新鮮なままペースト状に加工する高度な缶詰製造技術は、「CIAO ちゅ~る」にも活かされています。

創業時から継承されてきたイノベーションの歴史が、オンリーワンの高い技術と時代を先取りした製品を生み出す基盤となっているのでしょう。
経営面の課題は?

いなば食品はグループを挙げてグローバル展開を加速し、業績も拡大しています。
しかし、経営面の死角や課題はないのでしょうか?
想定される事象を考察するとともに、いなば食品グループが講じている対策を見てみましょう。
円安・エネルギーコスト上昇
製造業においてはコストの大半を占める材料費とエネルギーコストの高騰が多くのメーカーの経営を圧迫し、企業の存続に必要な利益を出せなくなっているケースも見受けられます。
企業物価指数の高まりは今後も続くと予想される中、材料費の削減と製造工程の効率化という「企業努力」には限界があります。
しかし、いなば食品グループはペットフードや食品事業における原材料費、包装資材費などの上昇分を販売価格へ十分に転嫁できており、消費者にも総じて受け入れられています。
いなば食品は、2024年3月に焼津水産化学工業株式会社を買収するなど積極的なM&A戦略で販売を伸ばしていますが、今後は人件費の上昇などがどう影響するかも注目されます。
トランプ関税
アメリカ向け輸出を手がける企業にとっては、トランプ関税も収益圧迫の懸念材料となっています。
いなば食品グループは、主要な製造拠点を置くタイから米国への輸入関税(19%)による業績の下振れを見通し、「アメリカ国内の販売価格は見直さざるを得ない」と次の手を想定しています。
2025年度の通期業績予測では、タイから米国輸入関税による収益減少額を織り込み済みです。
ただし、今後の両国の交渉では市場アクセス、非関税障壁の削減、品目別の関税率などが議題となる予定で、これらの成り行きが注目されます。
いなば食品の最新業績

同社発表によると、いなば食品グループの2025年度上期(2025年4月1日~9月30日)における連結業績は、売上高が883億1,300百万円(昨年比111%)に達しました。
2025年度通期では売上高1,980億円(昨年比119%)、営業利益137億7,600万円(同104%)を見込み、いずれも過去最高を更新する見通しです。
2026年度も売上高2,600億円、営業利益220億円と、いずれも過去最高の連結業績を計画しており、利益率も上昇させる方針です。
今後のグローバル戦略

いなば食品は、2034年に連結売上高1兆円の達成を目標とする長期ビジョンを策定しています。
1兆円のうち、海外売上高は8,000億円規模を目標としています。
グローバル戦略のポイントとしているのは、以下の3つです。
「世界の食卓」を知り尽くす、徹底したローカライズ
いなば食品グループの競合優位性を支えているのは、国内外の市場ニーズを先取りした商品開発力とブランディング力です。
海外展開の強化にあたっては、「現地の生活文化・嗜好に合わせたラインナップの開発」「現地パートナー企業との戦略的アライアンス構築」「オンラインプラットフォームを活用したグローバル直販体制の整備」を重点的に実施しています。
現地の嗜好を捉えながら「勝てる市場」に経営資源を集中投下することで、海外でも確実な顧客基盤を形成しています。
“定番”のポジションを世界で確立するグローバルビジョン
いなば食品グループが掲げるグローバルビジョンは、単に売上拡大を目指すだけではありません。
「ブランドの認知度向上に伴う高付加価値化」「日本発の技術的優位性を世界で示し、“定番”としてのポジション確立」「国境を越えたイノベーション創出による次なる成長領域の開拓」の取り組みを通してブランドそのものの価値をさらに底上げし、長期的な競争優位を高めます。
成長を持続させる“核”が強靭になることで、海外のトップブランドと肩を並べる地位をより確かなものにします。
現地コミュニティとの共生・共創
事業を通じては売上や企業規模の拡大だけでなく、現地コミュニティ・雇用への貢献も重要視しています。
例えば、新規生産拠点の整備による雇用創出、社会課題に配慮した製造プロセスや資源活用の取り組みなど、グローバル企業としての責任を果たすことで、現地との共生・共創関係を高めます。
その結果として、ローカルコミュニティからも歓迎される形で市場が自然拡大していく好循環が生まれるという考え方です。

いなば食品はこれからも挑戦を止めることなく、国内外問わず、あらゆる市場でメーカーとしての価値を示していくに違いありません。
まとめ
いなば食品は2023年度連結決算で売上高1,000億円を突破し、2,000億円の到達も目前に迫っています。
連結売上高1兆円の達成を目指す中、グローバルな経営環境には不透明な要素もありますが、主力であるペットフード事業のマーケットは世界的にも拡大基調が続いています。
「真似しない、真似されない」という創業以来の取り組みが手繰り寄せるのは、世界中の消費者により身近なブランドとして親しまれ、持続的に発展するグローバル企業としての姿です。
2世紀余りも前に静岡の漁村で誕生した商店は、今ではグローバルマーケットを強力に牽引する企業へと成長しました。
いなば食品が次の100年に向けてどんなイノベーションを創出し、世界中の人々を驚かせていくのか、これからも目が離せません。



















いなば食品について知りたい人はぜひ最後までお読みください。