ファンドマネージャーについて、名前は知っていても業務内容など詳しく知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、ファンドマネージャーとはどんな職業か、年収や資格、就職先や将来についてなど、さまざまな角度から詳しく紹介します。
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ファンドマネージャーとは何か
ファンドマネージャーの基本的な役割や職務内容について説明し、その重要性を理解しましょう。
ファンドマネージャーを紹介する前に、まずは「ファンド」について説明します。
ファンドとは、多数の投資家が資金を出し合い、運用をプロに任せる投資商品の1つで、投信、投資信託とも呼ばれています。
つまりファンドマネージャーとは、投資家から預かった資金を運用する、金融商品運用のプロのことです。預かった資金で運用を任されているため、利益を上げることを目的として活動しています。
ファンドマネージャーの仕事内容/投資判断からポートフォリオの構築までの詳細なプロセス
ファンドマネージャーが日々行う具体的な業務について説明します。
投資判断、市場分析、ポートフォリオの構築、そして投資家への報告といった業務プロセスの詳細を解説します。
ファンドマネージャーの業務プロセス1.投資判断
ファンドマネージャーは、投資家から集めた資金をもとにファンドを作成します。
運用し利益を上げるためにまずは投資戦略を策定、銘柄の選定や売買のタイミングを決め、リスク管理と共に運用するために投資判断が必要です。
ファンドマネージャーの業務プロセス2.市場分析
ファンドマネージャーの業務内容の中でも、市場分析は特に重要です。
経済や社会の情勢、企業の情報、金融市場などの動向から分析することが、適切な投資判断につながります。
市場は常に動いているため、市場分析はファンドマネージャーの日常業務の中心です。
ファンドマネージャーの業務プロセス3.ポートフォリオ構築
ポートフォリオとは、金融商品の一覧や組み合わせのことです。
投資戦略から導き出した投資判断と市場分析により、株式や債券など適切な金融商品を組み合わせて運用します。
資産を効果的に管理し、リスクを抑えて利益を上げるため、市場分析を通してポートフォリオに修正が必要かどうか定期的に見直し、構築した金融商品の最適化を維持します。
ファンドマネージャーの業務プロセス4.投資家への報告
ファンドマネージャーは預かった資金を運用しているため、投資家へ運用の詳細を報告します。
運用報告書や投資成績について定期的にレポートを作成し、戦略なども踏まえて説明します。
プレゼンテーションを通じてコミュニケーションをとりながら、信頼関係を築き、投資家から安心してファンドマネージャーに資金を預けてもらえる努力が必要になる業務です。
ファンドマネージャーに必要なスキルと能力
ファンドマネージャーに求められるスキルについて解説します。
特に、経済動向の分析能力や投資判断のためのスキル、そして投資家やチームメンバーとの効果的なコミュニケーション能力の重要性について説明します。
分析能力と情報収集能力で投資判断を
ファンドマネージャーに必要な技術的なスキルは、分析能力と情報収集能力です。
経済情勢や金融市場、業界動向や投資先企業のニュースなど、幅広い情報を収集した上で分析が行われます。銘柄を選ぶときには、経済指標や企業の財務状況などを理解し、投資戦略を練る必要があります。
特に外資系企業では国際的な情報をとりにいくため、英語力も必要になります。
ポートフォリオの最適化を維持するためには投資判断が必要となるからです。
信頼を得るにはコミュニケーション能力が重要
投資家やチームメンバー、どちらからも信頼を得るには高いコミュニケーション能力が重要です。
運用方針や投資戦略など、投資家に報告するのもファンドマネージャーの業務の1つです。
報告の際にプレゼンテーション能力も必要になりますが、運用を任せてもらえるよう、投資家との信頼関係を築くためには高いコミュニケーション能力が重要になります。
ファンドマネージャーは通常、企業や業界を対象に経済状況の調査や分析をするアナリストや、経済理論とデータ分析を用いて経済問題を研究し予測するエコノミストなどとチームを組んで働きます。
チームメンバーと円滑なコミュニケーションから連携をとれば効果的な戦略を練りやすくなり、成功へ導く要素になります。
ファンドマネージャーになるには?学歴や資格の重要性について
ファンドマネージャーになるために必要な学歴や資格について詳しく説明し、業界で成功するためにどのような教育やスキルが求められるのかを解説します。
ファンドマネージャーになるには必要な学歴や資格
ファンドマネージャーになるには、特定の学歴は必須ではありません。
しかし、実際には大学などの経済学部や商学部出身が多く、金融機関でスタートさせるファンドマネージャーが多くいます。運用会社として独立している投資信託会社や投資顧問会社などで働く場合は、大卒以上の学歴が求められることが大半です。
資格も特定のものが必須ではありませんが、ファンドマネージャーになるには次の資格を持っているといいでしょう。
持っていた方がいい資格
- 日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
- CFA
- 証券アナリスト資格
- ファイナンシャルプランナー
- TOEICなどの英語関係資格
資格を持っていれば知識がある証明になるため、ファンドマネージャーとしてのキャリアを築くために有利です。
ファンドマネージャーになるには教育とスキルも
ファンドマネージャーになるには、仕事に関係する分野の教育を受けていると成功に近づけます。
経済学や商学、金融学や会計学などの分野について、身につければ投資戦略の立案や市場の動向を分析するために役立ちます。
教育だけでなく実務経験も必要となりますが、経験を積むためには分析能力やコミュニケーション能力が欠かせません。
預かった資金を誠実に運用するため、高い倫理観と責任感も求められるため、特定の学歴や資格よりも、教育やスキルと心構えの方が必要です。
ファンドマネージャーの年収とその背景
ファンドマネージャーの年収に関する情報を紹介し、経験やスキルがどのように収入に影響するかを具体的に説明します。
また、年収を向上させるための要素も考察します。
ファンドマネージャーの年収は実力次第で1,000万円
ファンドマネージャーの年収は、勤務先や経験、業務内容によって大きく異なります。
平均年収は約500万円前後から始まるのが一般的であり、高収入の部類にはいるのではないでしょうか。
特に外資系企業や通常のファンドよりも自由度が高く、市場の上げ下げ関係なく利益を追求するヘッジファンドの場合、年収が高くなる傾向があります。そのため、年収が1,000万円以上になることが一般的であり、実力や経験によってはさらに高い年収を目指せます。
一方、国内系のファンドマネージャーの場合は500万円から1,000万円程度が多いとされていますが、十分年収は高い方です。
ファンドマネージャー年収の高さは責任の重さから
ファンドマネージャーの年収が高いのは、大きな責任を伴う職業になるからです。
金融市場や経済全般にかかわる知識が求められ、企業や市場の動向など、分析能力や情報収集能力が必要です。
常に専門的な知識と実績を身につけ、情報収集と分析を繰り返しながら、預かった資金を運用して成果を出さなければならない、重い責任がのしかかる背景があるからこその年収の高さです。
ファンドマネージャーの外資系と日系企業の違い
ファンドマネージャーの外資系企業と日系企業での違いを解説します。
給与の水準と体系が違う
外資系企業と日系企業のファンドマネージャーの給与を比べると、給与水準は外資系企業の方が高く年収3,000万円を超えるのは珍しくありません。
給与水準が高い理由は、外資系ファンドマネージャーがハイリスク・ハイリターンの運用をするため、成功した場合の報酬が大きくなるからです。
給与体系についても違いがあり、外資系の場合は「年俸制」で業務内容や成果によって給与額が代わるケースが多く、基本給に、業績と連動した成果報酬が加算されます。成果報酬の割合が基本給と同じぐらいかそれ以上のため、年齢に関係なく成果次第で高収入を得られやすいのは給与体系の影響が大きいでしょう。
日本企業の場合、年齢や在籍年数、役職、成績など、決められる基本給に各種手当が加算される、「月給制」で平等に発生する給与体系です。成績は手当に反映されることもありますが、実際は在籍年数や年齢に比重を置いている場合が多いため、若いうちは外資系に比べると少なく感じるかもしれません。
福利厚生は日系企業が充実
福利厚生は日系企業の方が充実している傾向があります。住宅手当や社宅、家族手当などがありますが、外資系企業はあまりない場合が多くあります。給与を高く設定している代わりに、福利厚生のような手当を別途つけていない場合が多いのでしょう。
給与で見れば外資系が魅力的ですが、福利厚生の内容によっては日系企業の方が良い場合もあります。
仕事の進め方が個人的か組織的か
仕事の進め方は、外資系企業だと個人のやり方を重視してもらいやすいですが、自ら動かないと仕事はない傾向があります。こうした傾向から、外資系ファンドマネージャーは成果主義や能力主義の傾向がより強く感じられるのでしょう。
日系企業の場合は組織の考えに基づき、上司の指示やマニュアルに沿って仕事を進めます。組織で動くのが基本だからこそ、業務開始前の手厚い指導や学びがあると考えられます。
雇用形態が違うため特化かマルチか
外資系企業の場合は、業務内容や必要なスキルを明確にした上で雇用します。基本的に他の部署や拠点への異動はないため、特定の分野に特化したスキルを深掘りできる環境で働けます。
日系企業の場合、採用時には業務内容や勤務地は明確にせず、企業に向いていそうな人物を雇用します。部署異動があるため、異動先によっては新たな業務に取り組む可能性があるため、日系企業の方が幅広い業務スキルが身につくチャンスが多くあります。
ファンドマネージャーのキャリア形成は?アナリストからのステップアップと転職のチャンス
ファンドマネージャーとしてのキャリア形成について、どのようにしてアナリストからステップアップするか、そして転職のチャンスについて説明します。
優秀なファンドマネージャーが引き抜きの対象となる理由についても触れます。
ファンドマネージャーのキャリア形成はアナリストから
ファンドマネージャーとしてのキャリア形成は、アナリストとして経験を積んでから昇進するのが一般的です。
アナリストは特定の企業などに関する調査や分析をし、投資判断に必要な特定の情報を深く調べてからまとめ、ファンドマネージャーに提供しています。
こうした投資判断に必要な情報を提供する力、財務諸表の分析や市場調査のように、業務を通じて得た知識と経験は、さらに広範囲の情報収集や分析をし、投資判断ができるファンドマネージャーに繋がるからです。
ファンドマネージャーは多様なスキルと経験が必要とされるため、アナリストである間に実績を身につけるのが順当なのでしょう。
ファンドマネージャーは転職チャンスも引き抜きも多い
ファンドマネージャーとしての需要は高まっているため、転職チャンスは多くあります。
経済の動向や世界情勢の大規模な変化などにより、資産を投資で増やして守ることに関心を持つ人が増えているため、投資と運用のプロであるファンドマネージャーの活躍の場が広がっています。
引き抜きは金融業界において一般的ではありますが、背景としてファンドマネージャーの需要の高まりが影響し、優秀な人材は引き抜き対象になりやすい傾向があります。
ファンドマネージャーの成果は企業の業績に直結するため、実績豊富な優秀な人材を迎えたいのは自然な心理です。
キャリアアップ、報酬面などから、ファンドマネージャーは新たな挑戦を求めて転職を考える機会があるため、転職や引き抜きはよくある話といえます。
ファンドマネージャーの勤務先ヘッジファンドや投資顧問会社の特徴と違い
ファンドマネージャーが勤務する代表的な企業の種類について説明し、それぞれの特徴や仕事内容の違いについて詳しく解説します。
ヘッジファンド、投資信託会社、投資顧問会社、信託銀行、保険会社などの勤務先の特徴を紹介します。
ファンドマネージャーの代表的な勤務企業の種類5選
ファンドマネージャーが勤務する代表的な企業は、次の5つの企業が多い傾向にあります。
ファンドマネージャーが勤務する代表底な企業の種
- ヘッジファンド
- 投資信託会社
- 投資顧問会社
- 信託銀行
- 保険会社
順番に解説します。
ファンドマネージャー勤務企業[1]ヘッジファンド
ヘッジファンドは高リスク・高リターンの運用をするのが特徴です。
ファンドマネージャーは高度な専門知識と経験が求められ、多様な運営手法を用いて利益を出しにいくため、柔軟な思考と迅速な意思決定が必要となります。
活動への規制が緩いため、できることが多いのもヘッジファンドならではです。
ファンドマネージャー勤務企業[2]投資信託会社
投資信託会社は、比較的初心者向けでリスク分散を重視しているのが特徴です。
投資家から集めた資金をもとに株式や債券などの金融商品を運用しますが、集める資金は少額なため、投資家から見れば手軽に始めやすいメリットがあります。
ファンドマネージャー勤務企業[3]投資顧問会社
投資顧問会社は「投資助言業務」と「投資一任業務」の2種類の業務が特徴です。
- 投資助言業務:投資のアドバイスのみを行う業務
- 投資一任業務:投資判断と投資の権限を投資家から委任を受けて行う業務
ファンドマネージャーの仕事は投資家の代わりに運用することでしたが、助言のみ行い、投資は投資家に任せる業務もあります。
ファンドマネージャー勤務企業[4]信託銀行
信託銀行は、財産保全や遺産管理などの長期的な管理に適しているのが特徴です。
信託銀行のファンドマネージャーは、投資家から預かった資産を運用するとき、慎重かつ安定した投資方針を決めるため、リスクの少ない運用を選ぶ力が求められます。
ファンドマネージャー勤務企業[5]保険会社
保険会社でのファンドマネージャーの主な業務は、顧客から集めた保険料を運用し、将来の保険金の支払いに備えることです。
資産を保険料という形で預かり、運用するのが特徴です。
有名なファンドマネージャー
業界で有名なファンドマネージャーたちを紹介し、どのような戦略や決断が成功をもたらしたのかを具体的に説明します。
世界で有名なファンドマネージャーはジョージ・ソロス
ジョージ・ソロス氏は世界的に有名なファンドマネージャーです。特に市場の非効率性を狙った投資戦略で知られています。
代表的な成功例として、1992年の「ポンド危機」が挙げられます。
当時、ジョージ・ソロス氏はイギリスの通貨政策が非持続的であると判断し、大規模な空売りを実施しました。ポンドは大幅に下落し、ジョージ・ソロス氏が運用するヘッジファンドは約10億ドルの利益をあげました。この決断は、徹底した市場分析と迅速な意思決定の成果とされています。
大胆でありながら緻密な判断力を持ち、リスクを恐れず決断する彼の姿勢が、多くの投資家の模範となっています。
日本で有名なファンドマネージャーは清原達郎
清原達郎氏は卓越した投資成績と影響力から、業界で「伝説のファンドマネージャー」と呼ばれています。
運用で重視しているのが「中小型割安成長株」と「逆張り思考」で、小さな企業や人気とは言えない銘柄を選ぶことです。リーマンショック時には安くなったREITやPER(株価収益率)が低い企業を選び、成長の可能性がある銘柄を見つけ出し、大きな利益をあげました。
情報収集は自分の観察力と分析力を駆使し、「常識を疑う」姿勢を持って取り組んでいるのが特徴です。
こうして2005年にタワー投資顧問の運用部長として長者番付で全国1位に輝き、25年間投資を続けてきた日本株の運用パフォーマンスは9341%を出し、伝説と呼ばれています。
彼の成功は、単なる運ではなく、深い洞察力と独自の戦略によって支えられています。
ファンドマネージャーとアナリストの違いそれぞれの職務と役割の比較
ファンドマネージャーとアナリストの違いについて詳しく説明し、それぞれがどのような役割を持ち、どのように協力してファンド運営を支えているのかを解説します。
ここで再び、ファンドマネージャーとアナリストの業務について比較してみましょう。
ファンドマネージャー | アナリスト |
最終的な投資判断をし、ポートフォリオ全体のバランスやリスクを管理する責任を持つ。 顧客とのコミュニケーションが重要視される。 | 特定の企業などに特化した分析をした上で、その情報をもとにファンドマネージャーに投資アイデアを提供する。 内部向けの情報提供が中心。 |
情報収集や分析、全体バランスなどの専門性、責任の範囲が違います。
ファンドマネージャーとアナリストは、お互いを補完し合うことでより効果的な投資戦略が実現できる関係です。
ファンドマネージャーの未来/業界の変化と新たな可能性
ファンドマネージャー業界の現在と未来について考察し、今後の市場の動向や新たなチャンスについて詳しく説明します。
現在の業界
昨今、AIやビッグデータ分析の進展により、精度の高い運用戦略が求められる時代に突入しています。
ロボアドバイザーや、外国為替市場や株式市場で、プログラムが自動で売買のタイミングを決めて注文を繰り返すアルゴリズム取引など、新しい投資手法が登場しています。
個人投資家の場合だと老後資金形成への関心が高まっているため、ファンドマネージャーへの需要も高まるのが予想できます。
さらにESG(環境・社会・ガバナンス)投資が広まり、投資家が社会的責任を重視した運用成果を求める新たな流れを生み出しています。
今後ファンドマネージャーに必要なこと
未来を見越したファンドマネージャーには金融スキルに加え、テクノロジーへの理解や持続可能性への配慮が不可欠です。
これから活躍できるファンドマネージャーになるには、デジタル分野の進化に伴うリスクと機会を評価し、提供できれば、高い評価を得られるでしょう。