
「司法書士とは、どんな役割なの?」
「司法書士の仕事内容について教えて!」
「司法書士になるには、どんな資格や勉強方法が必要なの?」
「司法書士の年収やキャリアパスが知りたい」
といったように、司法書士という職業が気になっているのではないでしょうか?実は司法書士は、不動産や法人の登記、供託などの契約上の合意に関する法律のスペシャリストです。法廷での代理訴訟や当事者が合意する契約上の法的手続きなど、さまざまな業務を担います。
この記事では、司法書士の仕事内容や年収、資格取得方法、司法書士になるまでの道のりについて解説しています。
これから司法書士になりたい方は必見の内容です。ぜひ最後までお読みください。
- 司法書士の仕事内容と役割
- 弁護士や行政書士との違い
- 司法書士になるまでの道のり
- 試験に合格するための勉強方法
- 司法書士の4つのキャリアパス
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司法書士とは?
司法書士とは、法律関連の手続きを担っている法律家です。主に法務局や裁判所、検察庁に提出する書類作成を担当しています。そのなかでも不動産や会社の登記、供託に関する書類作成の依頼が多いといわれています。
これらの業務には法律の知識が必須であり、個人や法人から依頼を受けた際に手続きを代行します。
司法書士が担う役割は次のとおりです。
業務内容 | 具体的な内容 |
---|---|
不動産登記 | 土地や建物の所有者を証明するための手続きを代行 |
商業登記 | 会社設立や役員変更などの手続き |
供託手続き | 法律に基づく金銭や物品の供託の代行 |
簡易裁判所での代理業務 | 訴額140万円以下の民事訴訟の代理(民事調停、仲裁事件、裁判外和解など) |
検察所や裁判所に提出する書類作成 | 法的な内容に関する書類作成の代行 |
これらの法的な手続きを進めることが司法書士の重要な役割です。
司法書士法第3条や司法書士法施行規則第31条の規定を引用すると、司法書士の業務は次のように定義されています。
- 登記又は供託手続の代理
- (地方)法務局に提出する書類の作成
- (地方)法務局長に対する登記、供託の審査請求手続の代理
- 裁判所または検察庁に提出する書類の作成、(地方)法務局に対する筆界特定手続書類の作成
- 上記1~4に関する相談
- 法務大臣の認定を受けた司法書士については、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件、裁判外和解等の代理及びこれらに関する相談
- 対象土地の価格が5600万円以下の筆界特定手続の代理及びこれに関する相談
- 家庭裁判所から選任される成年後見人、不在者財産管理人、破産管財人などの業務
このように司法書士は、法律に関する手続きのスペシャリストです。不動産や会社の登記、供託の代行や一定金額の民事訴訟での代理人を努めています。
司法書士の仕事内容を深掘り
司法書士の業務は、主となる供託と登記以外にも、企業の法務や遺産相続に関わる仕事にも関わりがあります。
司法書士の仕事内容は以下のとおりです。
- 登記業務
- 供託業務
- 書類作成
- 企業の法務
- 遺産の相続関連業務
- 簡易裁判所における代理訴訟
では、それぞれの項目についてみていきましょう。
登記業務
司法書士の仕事のなかで、最も依頼が多いのが登記手続きです。この「登記」とは、行政上の手続きから権利を公に示す制度を指します。新しい会社の設立には、法人としての登記が必要となります。
これにより、法律上の会社を所有する権利や義務が明確化されます。例えば、家や土地などの不動産を購入したときには、不動産登記によって権利を示せます。手続きによって、正式な所有者として認められるのです。
このように登記手続きは、事業者の権利を守るための大切な業務なのです。
供託業務
供託業務は、司法書士の重要な仕事のひとつです。「供託」とは、有価証券やお金を法務局に預けておき、受け取るべき相手に分配するための手続きです。
司法書士が特に扱う案件に、弁済供託があります。これは、受け取るべき金銭を相手に支払うための手続きで、トラブルを避けるために重要です。
例えば、家主から家賃の増額を要求されたが、借主が不当と感じて増額前の家賃を支払おうとしたところ、受け取り拒否されたというケースが報告されています。
このような場合に、供託によって家主に支払い済みとみなされます。供託業務は、金銭的な法律トラブルを未然に防ぐ重要な役割なのです。
書類作成
司法書士は、法務局や裁判所、検察庁に提出する書類作成を担当しています。なかでも不動産や法人登記、供託に関する作成依頼が多いといわれています。
企業の法務コンサルティング
司法書士は、法人登記以外でもコンサルティングを提供する重要な役割を担います。2代目経営者への事業継承、給料システムの提案など、幅広い法務を扱っているからです。これにより、法的なリスク回避に必要なリーガルサポートを提供しています。
例えば、事業を次世代に引き継ぐ際には、相続や給料システム作りの手続きをサポートします。そのため司法書士は、法人登記だけでなく、企業活動の全般を支える専門家として活躍できる職業なのです。
遺産の相続関連業務
司法書士の仕事には、遺産の相続サポートがあります。令和6年から不動産の相続登記が義務化されるため、司法書士がサポートする場面が増えることでしょう。
例えば、生前に遺言書を作成するサポートや、家族信託の手続きなどが挙げられます。また、不動産に関する名義変更も代行できます。遺産相続における法的な手続きをスムーズにするために欠かせない存在です。
簡易裁判所における代理訴訟
司法書士は、簡易裁判所で訴訟額140万円以下の案件においては、弁護士のように代理訴訟ができるようになりました。
その背景には、2002年の司法書士法の改正にあります。この法改正により司法書士は、依頼者の代わりに弁論できるようになりました。
例えば、司法書士が依頼者の代わりに証人尋問や和解交渉、仮差し押さえなどの手続きに対応可能です。つまり、代理訴訟によって民事訴訟をサポートする役割も担えるです。
司法書士と弁護士の違いを知る
司法書士と弁護士は、法律の専門家という役割は同じですが、業務範囲や依頼するべき場面は大きく異なります。
司法書士は、当事者の合意の場で活躍する役割があります。一方で弁護士は、当事者間の紛争を解決する役割があるため、こちらの方が強い責任感が求められるでしょう。
例えば、不動産契約の際に売る側と買う側が契約に合意している場面でしたら、不動産登記のために司法書士が請け負います。
弁護士は、購入後の物件に破損や傷が発見されて欠陥があった場合に、売主に請求をしたいという紛争の場面で依頼します。
このように、取り組むべき問題の性質が違うため役割が大きく異なるのです。
司法書士の特徴 | 弁護士の特徴 | |
---|---|---|
主な業務内容 | ・不動産や会社の登記、供託手続きなど ・簡易裁判所における訴訟の代理 ・書類の作成代行 | ・刑事事件の法廷での弁護 ・民事訴訟での弁護 ・依頼者の法律相談 ・法務の専門として企業に就職 |
関与する場面 | 双方の合意がある場面に関与 | 当事者同士の紛争の場面に関与 |
資格取得 | ・司法書士試験に合格(受験資格は特になし) ・特殊なパターンとして法務大臣の認可がある | ・法科大学卒業もしくは、予備試験に合格して受験資格を得る ・司法試験に合格する ・司法修習として実務修習を受ける |
訴訟代理 | 認定司法書士は簡易裁判所で140万円以下の訴訟代理権を持つ | 訴額に関係なく、すべての裁判所で代理人として活動可能 |
司法書士と行政書士との違いを理解する
続いて、行政書士との違いについてみていきましょう。
まず行政書士とは、行政書士法に基づいた法律を取り扱う専門家です。主に、行政や官公署(国や地方公共団体の役所の総称)に提出する許認可申請や書類作成などの代理を行う職業です。つまり、国民と行政とのパイプ役を担っています。
一方で司法書士は、企業や不動産における登記・供託手続きなどのため、業務範囲が大きく異なります。
司法書士の特徴 | 行政書士の特徴 | |
---|---|---|
主な業務内容 | ・不動産や会社の登記、供託手続きなど ・簡易裁判所における訴訟の代理 ・書類の作成代行 | 行政への許認可申請や契約書作成など、書類作成や手続きが中心 |
関与する場面 | 双方の合意がある場面に関与 | 行政や官公署などへの各種許認可申請時に関与 |
資格取得 | ・司法書士試験に合格(受験資格は特になし) ・特殊なパターンとして法務大臣の認可がある | 行政書士試験に合格(受験資格は特になし) |
訴訟代理 | 認定司法書士は簡易裁判所で140万円以下の訴訟代理権を持つ | 訴訟代理権はないため、裁判の弁護はできない |
司法書士試験の難易度はどれくらいか?
司法書士試験の難易度について、試験の合格率や合格に必要な勉強時間についてまとめました。
弁護士と違い、司法書士は受験資格の条件がなく、誰でも挑戦できます。性別や年齢、学歴などの制限はありません。しかしながら、平均合格率が4〜5%未満と試験の難易度は高いといえます。また、合格に必要な勉強時間は約3,000時間といわれています。
一方で行政書士は、司法書士の3分の1程度の時間で済むため、行政書士の取得からはじめる方が多いといわれています。
総合的にみると司法書士の試験は誰でも受けやすいのですが、試験に合格するまでのハードルは、非常に高いといえるでしょう。
以下に、「司法書士」「弁護士」「行政書士」の試験について比較して紹介します。
職種 | 司法書士 | 弁護士 | 行政書士 |
---|---|---|---|
試験名 | 司法書士試験 | 司法試験 | 行政書士試験 |
受験資格 | なし | 法科大学院修了または司法試験予備試験合格が必要 | なし |
試験科目 | 民法、不動産登記法、商法・会社法、商業登記法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、司法書士法、供託法、刑法、憲法 | <法律基本7科目>憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法 <選択1科目>経済法など | 憲法、行政法、民法、商法、基礎法学、一般知識 |
平均合格率 | 約4〜5% | 約20~40% | 約9~10% |
合格に必要な時間 | 約3,000時間 | 予備試験:6,000~8,000時間 司法試験:3,000~5,000時間 ※法科大学への在学期間も含む | 500〜1,000時間程度 |
司法書士の資格取得に役立つ勉強方法
司法書士試験に合格するための勉強方法は、次のとおりです。
- 学習教材を絞る
- 関連知識と紐づける
- すべての情報を1冊のノートにまとめる
- 過去に勉強した内容を想起する
法律は暗記して、場面ごとに使い分ける必要があります。ただ、試験科目が非常に多いため効率的なインプットが重要になるでしょう。
学習教材を絞る
選ぶ学習教材によっては、合格に不要な知識が含まれることがあります。試験の合否を左右するのは、「基礎知識と重要知識の問題を正解できるか」です。
さまざまな教材を揃えて、網羅的に勉強するのは、効率が悪く疲弊するかもしれません。重要度が低い問題は、敢えて無視する取捨選択が必要になるでしょう。
ですので、教材を絞ることが重要な合格ポイントになるでしょう。実際の教材選びに関しては、現役の司法書士が推奨する教材を選ぶとよいでしょう。
関連知識と紐づける
テキストを読むときは、関連知識をリンクさせることが大切です。なぜなら、情報との関連性を持たせられると記憶に残りやすいからです。
問題集の余白に関連ページを、メモしながら勉強をすすめてください。何度も繰り返しているうちに、類似したページを思いだせるでしょう。
関連性を持たせるとチャンク化から、学習がスムーズになります。チャンク化とは、情報をチャンク化(小さなまとまり)にして記憶する方法です。これにより、効率よく情報をカテゴリ化して記憶できます。
電話番号を「090-1234-5678」のように区切ると覚えやすいのがいい例です。
関連ページをリンクしていくことで「そういえばAの法律は、Bの法律と関連してたな」と記憶に定着していきます。
すべての情報を1冊のノートにまとめる
司法書士の勉強は、多くの教材と知識をインプットしますが、1冊のノートにまとめることが大切です。なぜなら、過去問集や一問一答問題集、模試などの膨大な知識を頭に入れていくからです。
知識が分散していると、情報探しに時間がかかり、頭のなかを整理するのも難しくなるでしょう。復習の際に、情報検索できないとノートに書き残すメリットもなくなります。
例えば、民法カテゴリ、不動産登記カテゴリと付箋で分類しておくと記憶しやすいためおすすめです。
このように司法書士の科目をひとつ一つ概念化して、一冊のノートに集約しましょう。そうすれば、法律の勉強が捗ります。
問題演習で内容を想起する
問題演習は、テキスト内容の記憶の定着に有効な手段です。なぜなら、テキストを読むだけでは覚えにくいのですが、問題内容を想起することで記憶力が深まるからです。
脳科学的には、記憶は、保持される形が2つにわけられるといわれています。これは、学習後から数時間ほど続く短期記憶と、1日から生涯保持される長期記憶に残ります。
テキストを読み返して想起を繰り返していると、長期記憶に残りやすくなります。したがって、問題演習は複雑な法律を暗記しやすい便利な手段なのです。
司法書士になるための具体的なステップ
司法書士の資格取得から、実際に司法書士として活動できるまでの具体的なステップについて説明します。
STEP1:司法書士試験に合格する
まずは司法書士試験に合格する必要があります。
司法書士試験には受験資格がなく、学歴や年齢は問われません。試験は年に1回、7月の第1日曜日に筆記試験が行われます。筆記試験合格者は10月下旬に口述試験を受けて、最終結果の発表は11月初旬です。
受験料は8,000円で、収入印紙で納付します。試験科目は11科目に分かれており、法律に関する幅広い知識が求められます。
STEP2: 試験に合格後に新人研修を受ける
試験合格後は、司法書士法で定められている新人研修を受けます。
この研修には、日本司法書士連合会や各都道府県の司法書士会が主催しているものがあります。さらに、訴訟代理人を希望する方は「特別研修」を受講して、認定試験に合格することが必須です。
STEP3:研修後は司法書士会に登録する
最後に司法書士として活動するために、司法書士会および日本司法書士連合会に登録していきます。この登録を完了しない限り、「司法書士」と名乗ることはできません。登録後に正式な司法書士として、はじめてキャリアをスタートできるのです。
以上が司法書士としてデビューするまでのステップになります。弁護士と比較すると、司法試験の受験資格の取得が必要ないため、誰でも試験に挑戦できるのが魅力です。
司法書士の年収はどれくらいか
令和6年時点の厚生労働省での調査によると、平均年収は1121.7万円となっています。
出典:厚生労働省
ただし司法書士は、資格取得後に独立する場合と、勤務司法書士になる場合などで年収が変化します。
令和3年度の司法書士実態調査の集計結果によると、独立している司法書士は、「年収1,000~4,999万円」の30.8%を占めています。次に「年収200〜499万円」で全体の11.8%の割合です。
したがって、営業スキルや顧客数次第では、年収1,000万円を超えられる可能性があるといえるでしょう。
次に、勤務司法書士の年収で多くを占めていたのは「300〜400万円未満」でした。つまり、開業司法書士と比べると収入が低い傾向にあります。
出典:司法書士白書2021年度版
司法書士の4つのキャリアパス
司法書士の試験に合格したあとは、以下のキャリアパスから選択できます。
- 勤務司法書士としてキャリアを積む
- 勤務司法書士から独立する
- 司法書士の資格取得後に独立する
- 一般企業の専門部署に転職する
ここからは、司法書士のキャリアパスの内容について解説していきます。
組織に所属するか独立の2択から、あなたの好みにあわせた働き方を模索してみましょう。
勤務司法書士としてキャリアを積む
まず勤務司法書士からキャリアをスタートするケースが少なくありません。勤務司法書士とは、司法書士事務所や司法書士法人に勤務することです。そのため、事務所で先輩司法書士から指導を受けながら、現場のノウハウを習得できます。
大手事務所では幅広い業務を経験でき、中小事務所であればクライアントとの個別対応力を学べます。
このように勤務司法書士として働くことは、実務経験を磨き幅広い経験や専門性を身につける土台作りになるでしょう。
勤務司法書士から独立する
実務経験が浅い弁護士は、まず司法書士事務所での勤務からスタートして独立するのが一般的です。法律の知識があっても、登記や経営術などの経験が乏しいからです。
勤務司法書士としてベテランから指導を受けてスキルを磨きながら、準備ができたら独立を目指します。
また、コネクションを増やすきっかけにもなるため、独立を志す方は、ここからはじめる方が少なくありません。
司法書士の資格取得後に独立する
司法書士事務所で勤務してからの独立が一般的ですが、資格取得後に独立する「即独」も可能です。
即独のメリットは、自由に事務所を運営できることです。前職が司法書士と関わりがある業界なら、見込み顧客が多く軌道に乗りやすいでしょう。
さらに営業スキルや経営戦略を自発的に学ぶなど、主体性がある方なら成功率があがります。
一般企業の専門部署に転職する
司法書士は、一般企業の法務部や総務部として働く選択肢もあります。企業内の司法書士は、一般的に「企業法務」と呼ばれることが多いといわれています。
安定した給与体制で働けるうえに、不動産登記や商業登記、相続業務など、司法書士に求められる幅広いスキルで企業をサポートできるのが特徴です。
司法書士事務所での勤務と異なる点は、特定の企業に所属して、雇用契約が結ばれていることです。つまり業務委託ではなく、会社員と同じ待遇でかつ安定した労働環境でキャリアを築けるのが魅力といえるでしょう。